インフルエンザ

公開日2021.08.30

※当コンテンツの内容は2021年7月時点の情報となります。

「インフルエンザかな?」と思ったら、早めに医療機関へ! 症状や経過、薬、インフルエンザの型、かかったときの注意点などを解説します。
監修:岡部信彦(川崎市健康安全研究所 所長)

症状と経過

インフルエンザは全身の症状が強い

インフルエンザはインフルエンザウイルスによる感染症で、ウイルスは鼻やのど、気管支などから侵入します。

症状としては、突然の38~39℃を超える発熱と頭痛、関節痛、筋肉痛などに加え、鼻みず、のどの痛み、せきなどの上気道炎症状がみられ、全身がだるいなどの全身症状が強いことが特徴です。流行期(日本では例年11月~4月)にこれらの症状がみられた場合は、インフルエンザの可能性が高いと考えられます。もともとはこのようなかぜとは異なる強い症状の病気に「インフルエンザ」という病名がつけられ、その後その原因のほとんどはあるウイルスであることが証明され、インフルエンザウイルスと名付けられたものです。

インフルエンザにかかった人を年齢別にみると、0歳~10歳代が半数以上を占めています。保育施設や学校など集団で過ごす場所で流行しやすいことがうかがえます。
ただし、高齢の人がかかると重症化しやすいので、注意が必要です。

図1 インフルエンザの報告症例の年齢別割合

潜伏期間

ウイルスに感染してから症状が出てくるまでの潜伏期は、1日から5日(平均3日間)とされています。

かかってからの経過

大多数の人では約1週間で治ります。しかし乳幼児、高齢者、基礎疾患を持つ人では、気管支炎、肺炎などを併発したり基礎疾患の悪化を招いたりするなどして、最悪の場合死に至ることもあります。

インフルエンザにかかったら

インフルエンザかな? と思ったら早めに医療機関へ

かかった時、守ってほしいこと

  • 1インフルエンザかな? と思うような症状が出たら、早めに医療機関を受診してアドバイスを受けましょう。高齢者の場合は、高熱ではないことも多く、微熱が続く、呼吸が荒い・速い、息苦しさが感じられる、などは注意信号となります。
  • 2安静にして、休養をとりましょう。特に睡眠を十分にとることが大切です。
  • 3水分を十分に補給しましょう。お茶、ジュース、スープなど飲みたいもので結構です。
  • 4症状の変化には十分気をつけてください。薬を飲む、飲まないにかかわらず、熱が出ている時、その様子の変化にはよく気をつけるようにしてください。

とくに子どもの場合は、意識がぼんやりする、意識がなくなり、うわごとを言ったり興奮したりする、ふだんと違うとっぴな行動をとる、見えないはずのものが見える(幻視)、妄想、けいれんなどに注意してください。子どもを一人きりにせず、見守るようにしましょう。
乳幼児の発熱Q&A

薬について

インフルエンザには抗生剤(抗菌薬)は効きません。しかし、インフルエンザにかかったことにより、他の細菌にも感染しやすくなり、このような細菌の感染による肺炎や気管支炎などの合併症に対する治療として、抗生剤(抗菌薬)を使用することがあります。

抗インフルエンザウイルス薬は、インフルエンザの早い回復に効果的です。

それぞれの薬の効果は、一人ひとりの症状や体調によっても異なります。正しい飲み方、飲んではいけない場合、副作用への注意などについて、医療機関や薬局できちんと説明を受けてください。また、処方する、しないは医師の判断となりますので、十分に医師に相談することが重要です。

なお、いわゆる「かぜ薬」といわれるものは、発熱や鼻汁、鼻づまりなどの症状をやわらげることはできますが、インフルエンザウイルスや細菌に直接効くものではありません。小児の解熱剤には、使用することによって急性脳症の原因となったり、脳症を悪化させたりするものがあります。解熱剤の使用は、かかりつけの医師や看護師、薬剤師などにあらかじめ相談しておくとよいでしょう。

インフルエンザの型

インフルエンザで大きな流行を起こすのは「A型」と「B型」のウイルス

インフルエンザは、インフルエンザウイルスの感染でおこります。インフルエンザウイルスは、その構造の違いからA型、B型、C型の3つに大きく分けられます。流行を起こすのはおもにA型とB型で、C型はあまり大流行の元とはならないようです。

近年、日本で流行しているのは、A(H1N1)のタイプ、A(H3N2)のタイプ(香港型)とB型(ビクトリア系統、山形系統)の4種類です。

これらの4種類のインフルエンザウイルスは、毎年世界中で流行を繰り返していますが、流行するタイプの組み合わせやその割合は、国や地域で異なっています。日本でも、A型が多い、B型が多い、さらにその中でのタイプの割合などが、シーズンごとに大きく変わっています。

図2 インフルエンザウイルス分離・検出報告数の割合 2016/17シーズン~2019/20シーズン

新型もいずれ季節性に

A(H1N1)タイプのウイルスのほとんどが、2009年に発生したH1N1pdm09ウイルスです。以前、季節性ウイルスとして流行していた、ソ連型と呼ばれるA(H1N1)タイプのウイルスは2009年のH1N1pdm09ウイルス発生後は検出されていません。

H1N1pdm09は、2009年にメキシコで発生し、新型インフルエンザとして世界的に大流行しました。日本でも、多くの人が免疫を持っていなかったため、大きな流行となりましたが、ほかの国々に比べ、死亡率は低い水準で終わりました。

翌年には、季節性インフルエンザとは異なる時期に大きな流行が発生するといった特別な状況は確認されなくなり、その後、2011年3月31日の時点で「新型インフルエンザ」と呼ばれていたインフルエンザA(H1N1)pdm2009ウイルスは、季節性インフルエンザとして取り扱われることになり、対応も季節性インフルエンザの対策に移っています。

インフルエンザウイルスの種類が違うと1シーズンに2回以上かかることもある

原因となっているインフルエンザウイルスの種類によって、症状や治療、予防法が大きく変わることはありません。ただ、医師が処方する治療薬(抗インフルエンザウイルス薬)の種類はウイルスの型によって効果が異なることがあります。

また、1度インフルエンザにかかるとそのウイルスに対する免疫ができるので、そのシーズン中に同じインフルエンザウイルスにかかることはなくなります。しかしインフルエンザウイルスは4種類が同時に流行していることもあるので、1シーズン中に、ある一つの型にかかったあとに、今度は別の型にかかってしまう、ということはあり得ることです。

なお、インフルエンザのワクチンはあらかじめ4種類の型の混合されたものとなっています。

インフルエンザの予防法

ワクチンで予防

ワクチン接種を受ける

インフルエンザの科学的な予防法は、ワクチン接種です。流行前にワクチン接種を受けることで、発症を防いだり、発症しても軽くすませたりすることができます。

いつワクチン接種を受けるか

地域によって、また年によって多少の差はありますが、日本のインフルエンザの流行は12月下旬から3月上旬が中心になるので、できれば11月中、遅くとも12月中には接種をすませておくことをおすすめします。

ワクチンが効くまでの期間

個人差がありますが、ワクチン接種からその予防効果が現れるまでには2週間はかかります。

ワクチンは何ヵ月効くのか

個人差がありますが、ワクチンの効果は約5ヶ月持続するとされています。 つまり11月はじめに接種すると、4月くらいまでは効果があると考えられます。

ワクチンは1回か2回か

日本では、生後6ヶ月以上13歳未満では2回(1回目と2回目の間は2~4週間、できれば4週間)、13歳以上では1回接種が推奨されています。

ワクチン以外の予防法

外出をひかえる

インフルエンザは、インフルエンザにかかった人のせき、くしゃみ、つばなどの飛沫とともに放出されたウイルスを、鼻腔や気管など気道に吸入することによって感染します(飛沫感染)。インフルエンザが流行してきたら、とくに高齢者や慢性疾患を持っている人、疲れていたり睡眠不足で調子が良くなかったりする人は、人混みや繁華街への外出をひかえましょう。

加湿する

空気が乾燥すると、インフルエンザにかかりやすくなります。のどの粘膜の防御機能が低下するためです。外出時にはマスクを利用したり、室内では加湿器などを使ったりして適度な湿度(50~60%)を保ちましょう。

休養と食事

十分に休養をとり、体力や抵抗力を高め、常日ごろからバランスのよい食事をとることも大切です。帰宅時のうがい、手洗いも、一般的な感染症の予防としておすすめします。

監修者紹介

岡部信彦

川崎市衛生研究 所長

1971年東京慈恵会医科大学卒業。同大学小児科で研修後、帝京大学小児科助手、その後慈恵医大小児科助手。国立小児病院感染科、神奈川県衛生看護専門学校付属病院小児科などに勤務。1991年~1994年、世界保健機関(WHO)西太平洋地域事務局(フィリピン・マニラ市)伝染病疾患予防対策課課長。1994~1997年慈恵医大小児科助教授。1997年国立感染症研究所感染症情報センター・室長。2000年、同研究所感染症情報センター長。2012年から現職。内閣官房新型コロナウイルス感染症対策分科会委員、厚生労働省新型コロナウイルス対策アドバイザリーボード委員を務めている。

岡部先生
からのメッセージ
新型コロナウイルス感染症も、インフルエンザも、ノロウイルスも感染症です。感染症はまずは自分が病気にならないよう、そして人にうつさないように、自分を大切にし、人を思いやることによってその数を減らし、重症になる方、亡くなる方を減らすことができます。病気になった時の治療は医療機関で行いますが、病気にならないための予防は、一人ひとりが生活の中でやらないとできません。糖尿病や肥満などの生活習慣に係る慢性の病気を早く見つけ、いい状態に保っておくことも、感染症を悪化させない重要な点です。健康診断や慢性疾患の息の長い治療も飽きずに、きちんと続けてください。
新型コロナウイルス感染症は、インフルエンザやノロウイルスほどかかりやすい感染症ではありません。それだけに身近に感じないのかもしれませんが、かかった時の重症化の割合や後遺症の問題はインフルエンザやノロウイルスよりもはるかに高くなることも忘れずにいてください。
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