公開日2021.08.30
※当コンテンツの内容は2021年7月時点の情報となります。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行に伴い、体調の変化を知る目安として体温を測る機会が増えています。健康管理のための機器としてより身近になった体温計について、測定方式やお手入れ法などを調査しました。
監修:岡部信彦(川崎市健康安全研究所 参与)
目次
質問に対する回答結果は、図1の通りです。「予測式+実測式」という方式を理解している人は28.0%でした。方式を理解して購入している人は、おおむね4人に1人ということになります。
測定方式に種類があることは知っているものの、「実測式」と「予測式+実測式」について正しい知識を持ち、その特性を理解して体温計を購入している人は少数派と考えられます。また、47.5%の人は、二つの方式があることを「知らなかった」と回答しています。
測定部位のその時の温度を測定、表示する方式を実測式といいます。これ以上は上がらない温度(平衡温)になるまで(測定部位の温度が体の内部の温度と一致するまで)測る必要があります。腋(ワキ)の下で測る場合、平衡温になるまで通常10分程度かかります。
質問に対する回答は、図3の通りです。90%以上の人が予測式で体温を測定しています。予測式+実測式の電子体温計を用いている場合は、実測式の機能はほとんど使われていないことがわかります。
回答の中から、棒状の電子体温計を使用している人だけを取り上げたものが図4です。洗浄の必要を感じておらず、何もしないという回答が45.5%といちばん多く半数弱を占めていました。清潔を保っている人が行う方法としては、「消毒剤を含ませた布などで拭く」が最も多く24.0%でした。
棒状電子体温計を使用している人が、どのくらいの頻度で消毒・洗浄をしているかについてまとめたものが図5です。毎日洗浄している人が27.3%と最も多く、次いで週に1回の人が19.6%でした。週1回以上の人の数を合計すると、63%になります。
一方、月に1日の人が11.3%で、月に1日以下の頻度の人を合計すると(その他を除く)25.7%でした。
人間の皮膚には、皮膚常在菌という細菌が住みついています。通常は病気を起こすことは少ないのですが、高齢や何らかの理由で免疫力が低下している場合には、病気につながることがあります。体温計を使用する腋(ワキ)の下にも、細菌がいます。
現在は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行に伴い、健康管理、体調のチェックのために日常的に体温を測る人も増えていると考えられます。
ただし、体温が気になるのは、やはり「熱っぽい」「何となくだるい」といった不調を感じている時です。常在菌が悪さをしないとも限りません。
さらに、季節性インフルエンザ、ノロウイルス感染症の流行などで、家族が体温計を頻繁に使う可能性がある時期には、体温計を通じて、感染症が広がらないように注意が必要です。
すでにかぜやインフルエンザにかかっていた人が、くしゃみやせきをしてウイルスを含む飛沫が手や体温計についてしまった場合、何もしなければ、次に体温計を使う人にうつる可能性が残ります。
病院などの医療施設では、入院している患者さんの場合は専用の体温計を用意したり、外来では、防水機能付きの電子体温計を使ったりして、使用後にはその都度洗浄と消毒を必ず行い、清潔を保ち、体温計を介して感染症が広がることを防いでいます。
また、家庭で使われる体温計の中にも、防水機能がついている体温計や、消毒ができる体温計があります。取扱説明書等を参考に、正しい清掃方法を確認し、体温計を清潔に保ちましょう。
岡部信彦
川崎市健康安全研究所 参与
1971年、東京慈恵会医科大学卒業。同大学小児科で研修後、帝京大学小児科助手、その後、慈恵医大小児科助手。国立小児病院感染科、神奈川県立衛生看護専門学校付属病院小児科などに勤務。1991~1994年、世界保健機関(WHO)西太平洋地域事務局(フィリピン・マニラ市)伝染性疾患予防対策課課長。1994~1997年、慈恵医大小児科助教授。1997年、国立感染症研究所感染症情報センター・室長。2000年、同研究所感染症情報センター長。2012年から川崎市健康安全研究所 所長に就任し、2024年より現職。内閣官房新型コロナウイルス感染症対策分科会委員、厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード委員を歴任。