体温ってなんだろう?

公開日2021.08.30

※当コンテンツの内容は2021年7月時点の情報となります。

体温は体のなかで起きている化学反応(代謝)の結果として発生する熱(熱産生)と、体外に逃げていく熱(熱放散)のバランスの結果、一定の範囲に調節・維持されているもので、生命の維持に欠かせないものです。
監修:永島 計 早稲田大学人間科学学術院 体温・体液研究室 教授(医師、博士(医学))

生命維持に欠かせない重要なものです

熱産生と熱放散のバランスで保たれています

私たちが日々、口にしている食べ物は、体のなかで必要な栄養素に分解されたり、細胞が活動する時に必要なエネルギーに転換されたりしています。このような体のなかで起きている化学反応のことを代謝といいます。代謝の過程で熱が発生します。

一方、発生した熱は周囲の環境に逃げていく(放散される)ため、体のなかの温度が上がりっぱなしになることはありません。熱産生と熱放散のバランスが取れていると、体温は一定に保たれます。

ヒトにおける体温の概念の模式図

熱産生が熱放散を上回ると体温は上昇します

図1のシーソーを見るとわかりますが、熱産生が熱放散を上回る状態になると、体温は上昇します。たとえば、激しい運動をすると、代謝が活発になるので、たくさん熱が産生され、体温は上昇します。シーソーの左側が重くなった状態です。

逆に冷たい水の中に転落したら、どうなるでしょうか。熱は温度の高いところから低いところに移る性質があるので、体温は下がります。熱放散が増えてシーソーの右側が重くなる状態です。

体温を一定に保つ調節機能が備わっています

体の中の化学反応(代謝)には、酵素と呼ばれるたんぱく質が関係しています。酵素が効率よく働く温度の範囲はあまり広くなく、温度が高すぎても低すぎても効率よく代謝を行うことができません。このため、私たちの体は酵素が働きやすい一定の温度を維持できるようになっています。このような働きが体温調節です。

ヒトの体は環境に合わせて体温調節する機能が備わっていて、10℃や20℃の気温変化なら順応して生活することができます。ただし、体温そのものの変化の許容範囲は、そんなに広くありません。体温が34℃以下になると低体温症になり生命の危機となります。逆に43℃を超えて生存することも難しいとされています。

このように体温調節は、私たちが生きていくうえで、どうしても必要な、そしてとても重要な機能なのです。

監修者紹介

永島 計

早稲田大学人間科学学術院 体温・体液研究室 教授(医師、博士(医学))

1985年京都府立医科大学卒業。京都府立医科大学附属病院研修医、修練医、大阪鉄道病院レジデントを経て、京都府立医科大学大学院博士課程(生理系)修了。京都府立医科大学助手、YALE大学医学部・John B Pierce研究所ポストドクトラルアソシエート、王立ノースショア病院オーバーシーフェロー、大阪大学医学部助手•講師、早稲田大学助教授を経て、2004年から現職。日本スポーツ協会スポーツドクター、日本医師会認定産業医。

永島先生
からのメッセージ
人に限らず体温は生きていく上で非常に重要な要因です。感染症の蔓延(まんえん)によって、発熱や体温計について日常的に人々の話題にのぼるようになりました。しかし、体温は、発熱時だけの問題でなく、われわれのふだんの健康に密接にかかわっています。われわれが、生をうけて、死ぬまで高い温度に維持される体温のしくみを説明していきます。次に、平熱と呼ばれるふだんの体温を知るための測定の方法について解説をします。最後に、感染症の有無の最初の判断材料となる発熱について説明し、対処方法や体にとってどのような意味があるかを知っていただきたいと思います。
カテゴリ
テーマ
キーワード
大切なあの人に伝えよう!