公開日2021.08.30
※当コンテンツの内容は2021年7月時点の情報となります。
「昔より夏が暑くなった」と感じている人は多いのではないでしょうか。暑さにはいろいろな要素が関わりますが、都市部において、最高気温が35℃を超える猛暑日は増える傾向にあります。そうした環境の変化と共に注目されるようになったのが熱中症です。ここでは、どんな病気なのかについて、説明していきます。
監修:永島 計 早稲田大学人間科学学術院 体温・体液研究室 教授(医師、博士(医学))
熱中症は、暑い環境に長時間いたり、強い労働や運動によって代謝量が増加したりすることによるコントロールができない体温の上昇と、それによって生じる体のさまざまな異常の総称です。
熱中症は、過剰な発汗による脱水症や塩分喪失をきっかけとして始まる場合が多く見られます。この際、めまいや筋肉の痙攣(けいれん)、頭痛や吐き気などの症状が見られます。また、体温が40°Cを超えて継続すると体温調節そのものが破綻し、全身の血管での血栓症や臓器障害が生じ、生命の危機にさらされます。
総務省消防庁が毎年、熱中症で救急搬送された人数を公表しています。それによると2018年からの3年間(6月~9月)、いずれも6万人を超えており、猛暑だった2018年は9万2,000人を超えています。
熱中症は、次の4つのタイプに分けられています。(表1)
軽症 | 熱失神 | 皮膚血管が広がって血圧が下がり、脳の血流が減ることで起こります。代表的な症状はめまい、立ちくらみ、一時的な失神、顔面蒼白などで、脈は速く、弱くなります。長時間立っていたり、立ち上がったりしたときや、運動の後などに起こりやすいタイプです。軽症に分類されます。 |
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熱けいれん | 大量に汗をかき、水だけを補給して血液の塩分濃度が低下したときに起こります。症状は、足や腕、腹部などの筋肉の痛みとけいれんで、こむら返りや手足がつった状態も含まれます。軽症の一つです。 | |
中等症 | 熱疲労 | 大量に汗をかいたのに水分補給が追いつかず、脱水状態になったときに起こります。脱力感、倦怠感、めまい、頭痛、吐き気や嘔吐などがみられ、集中力や判断力も低下します。中等症に分類されます。 |
重症 | 熱射病 | 体温が上がったことで脳の温度も高くなり、中枢の神経機能に異常をきたした状態です。熱疲労の症状に加えて、呼びかけても反応が鈍い、言動がおかしい、意識がないといった意識障害がみられ、体温が非常に高くなっています。全身の臓器に障害が起こったり、生命に危険が及んだりすることもある重症のタイプです。 |
熱中症診療ガイドライン2015を参考にテルモで作成
永島 計
早稲田大学人間科学学術院 体温・体液研究室 教授(医師、博士(医学))
1985年京都府立医科大学卒業。京都府立医科大学附属病院研修医、修練医、大阪鉄道病院レジデントを経て、京都府立医科大学大学院博士課程(生理系)修了。京都府立医科大学助手、YALE大学医学部・John B Pierce研究所ポストドクトラルアソシエート、王立ノースショア病院オーバーシーフェロー、大阪大学医学部助手•講師、早稲田大学助教授を経て、2004年から現職。日本スポーツ協会スポーツドクター、日本医師会認定産業医。