公開日2021.08.30
※当コンテンツの内容は2021年7月時点の情報となります。
熱中症は急速に重症化したり命の危険にさらされたりする場合があるので、予防および初期対応が重要です。熱中症が疑われる人がいたら、あなたは何をすればよいでしょうか。また、自身に熱中症の症状がある場合には、どうしたらよいでしょうか。
監修:永島 計 早稲田大学人間科学学術院 体温・体液研究室 教授(医師、博士(医学))
まわりに熱中症が疑われる人がいたら、まず涼しい場所に移動させましょう。同時に、声かけをして、しっかり受け答えができるか確認をしましょう。意識があって返事をすることができても、おかしな言動があったり、自分のいる場所や日にちがわからなくなっていたりしていれば、それは熱中症が重篤であるサインと言えます。
涼しい場所とは、具体的にはエアコンのよく効いた室内が望ましく、難しい場合でも風通しの良い日陰を探して、仰向けに寝かせるようにしましょう。スポーツの防具や、労働のためのヘルメットや作業着などははずし、できるだけ熱がこもる原因になるようなものは除去しましょう。
はじめに、意識がしっかりしているものの、ぐったりしていたり、筋肉の痙攣を起こしていたりする場合の対応について解説します。まず、吐き気や嘔吐がないかを確認しましょう。水分が取れそうであれば飲水をうながしましょう。
準備があれば、塩分を多く含んだ食品やスポーツドリンクの摂取を勧めて様子をみることもよいでしょう。しばらく様子をみて症状が改善するのであれば帰宅してもらってかまいません。
水分摂取ができないようであったり、症状が悪化するようであったりすれば医療機関への受診、あるいは救急車での搬送が必要になります。この間もうちわであおいで冷やしたり、濡れタオルを顔面、頸部、体幹にのせて仰いだりするなど、できるだけ体を冷やすようにしましょう。
また、熱中症以外の病気の発症も考えておく必要があります。
受け答えに異常がある場合、あるいは明らかな意識低下が見られる場合は、頭部や体幹などに触れて体温があがっていないか(40℃を超えるような高体温の状態)を確かめましょう。高体温を疑えば、直ちに体を冷やすことを始め、同時に救急車の要請をしましょう。
体を冷やすのに最も有効な方法は、氷水をいれたゴムプールのようなもの(アイスバスと呼ばれます)で全身を冷やすことです。この際、過度の冷却を避けるために、冷却中の体深部の体温測定が望ましいとされています。
しかしながら、この方法には事前に道具の準備や安全に実施することができる人材が必要となるため、氷水に浸したタオルで体をおおったり、流水をかけたり、送風を行ったりするなどの一般の方でも安全に実施できる方法で冷却しながら救急車の到着を待ちましょう(全国平均で10分以内に到着すると報告されています)。
高体温の状態をできるだけ早く改善することが、悪化を防ぎ、予後を決定する重要な要因となります。高体温が認められない場合は、低血糖やてんかんなどの他の病気の可能性が高くなりますが、いずれにしても意識レベルの問題があれば、医療機関への搬送が必須です。
周囲にだれもいないときに熱中症の症状があったらどうすればいいでしょうか。
めまいや立ちくらみ、こむら返りや筋肉痛、大量の発汗などは、早い段階でみられる症状です。こうした自覚症状があるものの程度が軽く、自力で歩けて水分が補給できる場合は、自分で応急処置をした後、安静にして様子をみるだけで大丈夫です。それで回復するなら医療機関を受診する必要はありません。
頭痛、吐き気や嘔吐、脱力感や倦怠感などがあったり、自力で水分をとれなかったりする場合は受診が必要です。救急車を呼ぶか、だれかに病院に連れて行ってもらいましょう。体温が非常に高かったり手足が思うように動かせなかったりする場合は、一刻も早く受診してください。
永島 計
早稲田大学人間科学学術院 体温・体液研究室 教授(医師、博士(医学))
1985年京都府立医科大学卒業。京都府立医科大学附属病院研修医、修練医、大阪鉄道病院レジデントを経て、京都府立医科大学大学院博士課程(生理系)修了。京都府立医科大学助手、YALE大学医学部・John B Pierce研究所ポストドクトラルアソシエート、王立ノースショア病院オーバーシーフェロー、大阪大学医学部助手•講師、早稲田大学助教授を経て、2004年から現職。日本スポーツ協会スポーツドクター、日本医師会認定産業医。