電子体温計の予測精度の検証このページを印刷する

相原弼徳(元横浜市立大学・医学博士)

  • 予測精度データ収集方法
  • 予測式体温計の予測精度の結果
  • 予測値と実測値の相関関係の結果
  • 予測式体温計の再現性の結果
  • 結論

予測精度データ収集方法

検温の方法

1.腋窩で検温する。腋窩に汗をかいている場合は、タオル等で拭き取り、飲食・運動・入浴直後には測定を避ける、30分以上経過してから検温する。

2.体温計の先端を正しく腋窩の最高温部の位置にななめ下から奥まで深く入れる。

3.腋窩をとじて腕を体幹部に保持し、体温計を挟んでいるほうの手のひらを上に向けて、もう一方の手でひじを引き、脇腹に押えつけ、体温計が動かないように固定する。

体温計の入手

市販されている90秒予測計と30秒予測計電子体温計を購入し、評価に使用した。体温計は検定済みであることから、実測検温の精度は±0.1℃以内であると考えられる。

測定手順

ここに記載した予測値は、90秒予測計と30秒予測計を用いたものである。予測検温は体温計の最初のブザーが鳴動後、ワキ下から体温計を取り出して予測値を確認した。各測定は順不同で3分以上の間を空けて、それぞれ計3回実施したが、90秒予測計の1回目は10分検温による実測値である。

被験者データ

看護学生(健常人)を対象。総数229名のうち、測定できなかった4名を除いた225名のデータを用いた。

  • 平均値=36.9℃±0.34℃(N=225)
  • 性別が確認された数=187名(男:34名、女:153名)
  • 平均年齢=23.0±3.7歳(N=182)最年少者18歳、最年長者37歳

予測式体温計の予測精度の結果

予測精度は90秒予測計で97%台、30秒予測計で92%台でした。

表1:全データを使用した場合の予測精度

モデル番号 90秒予測計 30秒予測計
総数・名 450 675
平均値・℃ -0.02 +0.04
標準偏差・℃ 0.12 0.15
±0.2℃以内の割合・% 97.6 92.1

全データを使用した場合の予測精度の結果です。90秒予測計に関してはすでに別の試験結果が報告されており、その内容は平均値+0.01℃、標準偏差±0.13℃、誤差±0.2℃以内の確率98.0%でしたが、今回の測定も同様な結果になりました。

30秒予測計に関しても、予測成立後、10分までの時間があり、この間で体温計が動いたりする場合を除いていないので、92%台も十分な精度と言えます。

予測精度については、個人一人ひとりの内容を確認することはできませんが、全体として、平均値、標準偏差、±0.2℃以内の割合のいずれに着目しても影響がないという結果になりました。

予測式体温計の再現性の結果

間をあけて3回測ったときの再現性は98%台でした。

表2:全データを使用した場合の再現性

モデル番号 90秒予測計 30秒予測計
総数・名 225 675
平均値・℃ 0.08 0.00
標準偏差・℃ 0.09 0.09
±0.2℃以内の割合・% 98.2 98.8

3分以上の間を空けて、3回連続で測定する「繰り返し検温」の測定値を調べた結果です。1分以内や1〜2分の間を空けた程度ですと、前に測った予測検温の影響を受けてしまい一定にコントロールすることが難しくなりますので、コントロールしやすい3分以上の間を空けました。再現性は大切な項目であり、再現性が悪いと体温計の使用者が安心して使うことができません。

再現性の水準を示すのは「±0.2℃以内の割合」にあたりますが、98.8%の30秒予測計は再現性に優れており、90秒予測計も98.2%と良い結果になりました。

予測値と実測値の相関関係の結果

実測したときの値との相関(バラツキの少なさ)は良好でした。

図7:90秒予測計の実測値と予測値の相関図 図8:30秒予測計の実測値と予測値の相関図

予測値は、実測値と相関する必要があります。
予測値と実測値の相関関係を調べるには、データの分布が強く影響されていることを考慮しなくてはなりません。上2つの相関係数は冬から春まで取り続けたデータです。

相関係数が0.7以上だと予測値と実測値との相関が強く、0.7以下ですと弱い相関といえます。

結論

90秒予測計、30秒予測計ともに予測精度および再現性は十分な水準でした。

90秒予測計

30秒予測計

90秒予測計は最も予測精度の水準が高く97.6%でした。また、再現性は98.2%でした。

30秒の予測式体温計も92.1%と良い結果をだしました。検温時間の短縮が求められる小児又は意識がない人などには有用です。また、再現性は98.8%でした。

検温時間が短い腋窩体温計は、検温中に体温計を動かさないなど、その影響を受けぬよう厳密な測定法を行うべきである。

参考文献

  1. 相原まり子, 入來正躬:腋窩検温法と口腔検温法との比較. 日本生気象学会誌 1993;30:159-168
  2. 吉利和:臨床検温法について. 治療 1958;40;11:1202-1211
  3. Ogren J.M.:The Inaccuracy of Axillary Temperatures Measured With an Electronic Thermometers. AJDC 1990;144:109-111.
  4. 相原まり子, 中向井政子, 石井直子, 沼田弘美, 木本浩:電子体温計による腋窩温測定について. 日本女子衛生短期大学紀要 1986;6:42-46
  5. 相原弼徳, 烏山直樹,相原まり子, 雨宮愛:体温上昇に着目した腋窩温測定の試み.日温気物医誌 1996;59(2):110-120.
  6. 佐藤みつ子, 森千鶴, 永澤悦伸, 清水祐子:頸部冷罨法による生体反応に関する研究. 山梨医大紀要 1999;16:15-19.
  7. 君島邦雄, 池田誠, 村本裕:テルモの予測式電子体温計について. 人間の医学 1994;169:16(402)-23(409).

筆者紹介

相原弼徳(元横浜市立大学・医学博士)
研究分野:分子生物学 、環境生理学(含体力医学・栄養生理学) 、法医学など

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