日常で起きる発熱や急な発熱に関する疑問にお答えします。
発熱の程度を判断するには、平熱を知っておく必要があります。37.5℃の熱が出た場合、平熱が36.5℃の人は平熱より1℃高いのですが、平熱が37.0℃の人では0.5℃しか高くなっていないということになります。ふだんから平熱を測っていれば、どの程度の発熱かがわかります。
では平熱はどのように測ればいいのでしょうか。体温は1日のうちでも1℃以内程度の変動があり、午前4時ごろが最も低く、午後から夕方にかけて高い状態になります。つまり、平熱は1つではなく、時間帯によって異なるのです。
平熱の測り方は、起床時、午前、午後、夜の計4回体温を測り、時間帯ごとの平熱として把握することが理想ですが、現実的には難しいですから、同じ条件での体温を比較するように心がけましょう。食後すぐは体温が上がりますから、食前や食間に検温するのが適切です。また平熱の測定は1日だけでなく、日を置いて何回か測ってみましょう。なお、感染症法では、37.5℃以上を「発熱」、38.0℃以上を「高熱」に分類しています。
体温の高さは1つの目安になりますが、体温が高いほど重症かというと、そうとは言い切れません。顔色が青くなって体が震えたりすると、重症の病気のような印象になりますが、そのような場合でも何時間かたって体温が下がると、けろっとして笑顔が出て食事もよく食べるということがあります。
逆に、体温がそれほど高くなくても、機嫌が悪かったり、食欲がなかったり、体のどこかが痛かったりしている場合は、注意深く様子をみる必要があります。また、おしっこの間隔があいたり、回数が減ったりしていれば脱水症の目安になります。
いろいろな病気があって、熱の出方もいろいろですから、一概にはいえません。しかし、突然高い熱が出るというのは、体の中で大きな異変が起こったということですから、注意が必要です。たとえば、インフルエンザにかかった時は、ふつうの風邪と違って、いきなり38℃以上の高い熱が出たりします。
熱中症でも、はっきりと体温が上がったとき、とくに40℃以上の熱が出たら、熱中症のなかでも最も重い「熱射病」の可能性があります。こんな時は急いで病院に連れて行きましょう。
生後3カ月未満の場合を除けば、熱の高さだけで病院に行くか、行かないかを決めるべきではありません。熱以外の症状や、体の状態をみて判断することが大切です。ひとことでいえば「機嫌が悪い」とか「普段と様子が違う」ということになりますが、次のような場合は病院を受診する目安になると思いますので、参考にしてください。
乳幼児は、いつ熱を出すかわかりません。夜中に発熱した場合は、何かを買いに行くにも店が開いていないといった問題があります。発熱に備えて、ふだんから準備しておいたほうがよいものとして、次のような品目が考えられます。
※経口補水液は、水道水1Lに食塩1~2gと砂糖大さじ2~4杯(20~40g)を混ぜて簡易的につくることができます。
体温が高いと何とか熱を下げなければという気持ちになりますが、じつは発熱そのものが病気を治そうとしている生体反応の一つなのです。少なくとも発熱が軽度で、ほとんど苦痛を訴えない場合は解熱剤の必要はなく、むしろ与えないほうがよいとされています。解熱剤を使うべきかどうか判断がつかない場合は、かかりつけ医師に相談してください。
子ども、とくに就学前の乳幼児の体温は、環境の温度が高いとすぐ高くなる傾向があります。暑い部屋にいたり、厚着をさせたまま暖かい部屋にいると、熱が体内にこもって体温が高くなることがあります。
暑い環境にいると、人間は汗をかいて体表面から汗を出し、その気化熱で体温を下げようとするのですが、乳幼児は大人に比べ、体温の調節機能がそれほど発達していません。また体重あたりの体表面積が大きいため、環境温の変化を受けやすいのです。
ですから、「ちょっと暑いのかな?」と思ったら、薄着にさせてみると、体温が落ち着いてきて、機嫌もよくなることがあります。
熱が高いと脳がダメージを受けると心配する人がいますが、あまり心配はないとされています。もちろん、髄膜炎とか脳炎などの脳に傷害を与える病気も、高熱が出ます。しかし、少なくとも41℃未満では、単純に熱そのものが原因で、脳にダメージを与えることはないと考えられています。41℃以上の熱は、発熱単独でも全身に悪影響を与える恐れがありますが、これは、脳だけというよりも、全身に対する影響が起こるということです。
熱の出始めは寒気がするので、1枚多く着せたり、毛布でくるむなどして温めましょう。
熱が上がりきると、体がほてり汗をかくので、着ている服を薄手のものに替えるなどして調節します。体温を下げるためには、ぬるま湯で体を拭いてあげるのも効果があります。
熱が40℃以上あるときは、ワキの下、首の周り、足の付け根を冷やします。嫌がる場合は、冷凍庫などで冷やした大きめの保冷剤をタオルでくるみ、背中にあてて抱っこしてあげるのも効果があります。ただし、体に貼り付ける粘着タイプの冷却シートの場合、涼感はありますが、体温を下げる効果は期待できません。小さな子どもの場合は、鼻や口を圧迫し窒息する場合がありますので、使用には気をつけてください。
また、体温が42℃を超すと脳細胞はダメージを受けますので、この場合はとにかく冷やしたほうがよいでしょう。38℃以下で強く冷却すると低体温になる可能性があります。特に、解熱剤を使用しつつ冷却する場合は、冷やしすぎに注意し、小まめに体温測定をしましょう。
昔は熱があると厚着にさせたものですが、これは熱がこもるのでよくありません。熱があるときは、やや薄めの、着がえやすいものにしましょう。しかし、熱の上がり始めは寒がったり、手足が冷たくなったり、唇の色が悪くなったりしますので、その場合は掛け物をしてあげましょう。
湯船につかると体力を消耗するので、入浴は控え、シャワーでさっと体を流す、或いは、お湯で絞ったタオルで体を拭いてあげる等で対応しましょう。
脂分の多い食事は消化が悪いので、炭水化物や消化のよいたんぱく質を選びます。おかゆやうどん、フルーツ、ゼリーなどがおすすめです。
食欲がないのなら、無理に食べさせないでください。ただ、脱水になるといけませんから、水分だけは十分にあげてください。できれば経口補水液などで、こまめに水分補給をしてください。ヨーグルトやアイスクリームなども、ある程度は食事代わりになります。
解熱剤(熱さまし)を使う目的は、熱を下げるというよりも、 熱に伴う症状の緩和です。
子どもの機嫌がよく、水分が十分にとれているときは、無理に解熱剤を使う必要はありません。 体温が40℃くらいになると心配になりますが、高くても41℃くらいまでは、体の細胞への障害は少ないので様子をみましょう。
ぐったりして水分が十分にとれない場合などは、解熱剤を考慮します。 目安は38.5℃以上ですが、それ以下でも元気がないようなときは使って差しつかえありません。
病気の勢いが強い時は、解熱剤を使っても、あまり熱が下がらないことがあります。でも熱以外の症状がやわらげば、平熱レベルまで下がらなくても心配はいりません。
発熱時は、水分補給が大切です。熱によって汗が多く出ますし、さらに下痢や嘔吐を伴えば、、体は脱水状態になってしまいます。 水分を補給させる際は、下記の点に留意しましょう。
かぜやインフルエンザなどで胃腸が弱っているときに、冷めたい水や、一度にたくさんの水を与えると、胃腸症状を悪化させてしまう恐れがあります。水分は、時間をかけて少しずつ与えるようにします。
また、ミネラルを含んだスポーツドリンクや経口補水液をとることで、体外に排出された塩分などを補給することが可能です。