子ども(乳幼児)の発熱

公開日2021.08.30

※当コンテンツの内容は2022年11月時点の情報で更新しました。

子どもが急に熱を出すと、心配になるものですが、『熱の高さ=病気の重さ』ではないので、あわてず落ち着いて対処しましょう。ごくまれに、ウイルスや細菌が脳に侵入し、脳炎や髄膜炎を起こすことがありますが、このような重い病気のときは、必ず発熱以外の症状が現れます。嘔吐を繰り返す、青ざめてぐったりしている、声をかけても反応しないなど、様子がおかしい時は、深夜でも大至急病院へ行きましょう。
監修:草川功(聖路加国際病院 小児科 診療教育アドバイザー )

熱が出た!どうすればいいの?

<3カ月未満>

生後3カ月ごろまでは、泣く力が弱く、表情もはっきりしないため、見た目で異変に気づくのが遅れる場合があるので注意します。あまり、熱を出すことはありませんが、発熱した場合は、重大な病気の可能性もあるので、至急病院に連れて行きましょう。

<3カ月~1歳半ごろ(言葉を話せない時期)>

出生後、母親由来の免疫は徐々に減少し、生後4~5カ月でほとんど消失します。3カ月過ぎたころから、行動半径も広がり、感染症にかかりやすくなるため、熱を出すことが多くなります。しかし、乳幼児は体温調節の機能が未熟なので、気温や室温が高いだけで体温が上がることもあります。言葉をしゃべれるようになるまでは、乳幼児自身で体調変化をうまく伝えることはできません。保護者が平熱を把握しておき、小まめに体温を測ることが、体調変化を知る大きな手がかりとなります。平熱よりも1℃以上高い場合(およそ38℃以上)は発熱と考えましょう。熱が出た場合、熱以外の症状の有無など、全身状態をよく観察します。
下記の症状のうち、1つ以上「はい」であれば、病院を受診してください。
・元気がなく、ぐったりしている。
・活気がない。
・よく眠れずに、ウトウトしてる。
・水分をとるのをいやがる。
・おしっこが出ない。

<1歳半ごろ~6歳>

しゃべれるようになり、徐々に自身の体調変化を伝えることができるようになりますが、熱が出た場合、熱以外の症状の有無など、全身状態をよく観察します。発熱の基準、症状の有無は、上記の「3カ月~1歳半ごろ」と同様です。

フローチャート「熱が出た!どうすればいいの?」
日本小児科学会「こどもの救急 おかあさんのための救急&予防ノート」より引用
http://kodomo-qq.jp/index.php?pname=download#download04 2021/9月時点

なぜ熱が出るの?
乳幼児の平熱は?

熱性けいれん

発熱24時間以内は要注意!

熱性けいれんは、生後6カ月以上6歳未満の乳幼児の発熱に伴って引き起こされるけいれんのことです。
突然、体を硬直させて、ガタガタと震え始め、白目をむいたり、泡を吹くこともあります。初めてのときは驚きますが、通常、数分でおさまるので、落ち着いてケアしましょう。

熱性けいれんのケア

①顔を横向きに寝かせる
まず、子どもを床やベッドなど安全な場所に移動します。
衣類をゆるめ、吐くことがあるので、顔を横向きにして寝かせます。
口の中にタオルや割り箸を入れたり、大声で名前を読んだり、揺らすべきではありません。

②初めてなら、まず、救急車を呼びましょう。救急車が来るまでは、下記の点を見ておきましょう。
・手足の動き(震わせ方)はどうか
・目はどちらを向いていたのか
・何分くらいけいれんの動きが続いていたのかどうか
・おさまったあとの様子はどうか
などの点をよく観察し、受診時に医師に伝えます。
けいれんがおさまり、意識が戻ったら熱を測り
もし、救急車を呼ばなかった場合でも、念のため、かかりつけ医を受診しておきましょう。

熱性けいれんでやってはいけないことの例

抗けいれん剤の投与

熱性けいれんの多くは1回だけの経験で終わるので、抗けいれん剤の予防投与を行わず、経過を観察するのが望ましいとされています。熱性けいれんの既往があり、医師から発熱時の抗けいれん剤の予防投与を指示されている場合は、指示通りに、抗けいれん剤の坐薬をお尻の穴に挿入します。挿入後、15分から30分でけいれん予防に有効な濃度に達します。抗けいれん剤を使った時は、転びやすいので注意しましょう。

熱が出ているときの、自宅での過ごしかた

子どもが風邪などの一般的な病気で熱が出た場合は、下記の点に注意して過ごします。

1日目<熱の上がり始め>

顔色が悪かったり、手足が冷たくなって体が震えている時は、1枚多く着せたり、毛布をかけて保温しましょう。その後、手足が火照ってきて熱くなってきたら、衣類や布団は薄めのものに替えて、熱を逃しやすくしましょう。
発熱24時間以内は、熱性けいれんに注意しましょう。

熱が上がり始めの子ども

2~4日目<熱が上がりきる>

38~40℃の熱が数日続きます。手足が熱くなり、汗ばんできますので、衣類や布団は薄めのものに替えて、熱を逃しやすくしましょう。タオルでくるんだ保冷剤で首の横やワキの下を冷やすと気持ちよさそうにすることもありますが、嫌がるのなら不要です。
<水分補給>
発熱時に恐いのは脱水症です。母乳やミルクを飲んでくれるならそのままで、嫌がるなら水やイオン飲料、お茶などでも構いません。水、イオン飲料、お茶などは常温のものを用意し、一度にたくさん飲ませるのではなく、小まめな水分補給を心がけましょう。
<食事>
水分がとれているなら、無理に食事をする必要はありません。欲しがるのなら、おかゆ、うどん、野菜スープなど、消化のよいものを用意してあげましょう。
<お風呂>
お風呂は体力を消耗するので、お湯で絞ったタオルで拭いてあげるのがおすすめです。機嫌がよければ、短時間のシャワーでも構いません。

熱が上がりつらい様子の子ども

5日目<熱が下がってきた>

一般的に、熱は少しずつ下がっていきます。朝は低くても、夕方に上がることもあります。平熱に戻っても1日は室内でゆっくり過ごすようにします。再度、熱が上がるようなら、別の病気が潜んでいる可能性もあるので、受診しましょう。

熱が下がり落ち着いた様子の子ども

<本記事における下記のことばの定義>
「乳児」・・1歳未満
「幼児」・・満1歳から小学校就学前まで
※参考:児童福祉法

監修者紹介

草川功

聖路加国際病院 小児科 診療教育アドバイザー

東京医科大学病院小児科、東京医科大学八王子医療センター小児科、国立小児病院麻酔集中治療科、米国ピッツバーグ小児病院麻酔科・呼吸生理研究室、東京医科大学病院新生児部門などを経て1992年より聖路加国際病院小児科。2005年より同病院小児科医長。2022年より現職。公益法人全国保育サービス協会会長、実践女子大学生活科学部非常勤講師など兼任。

草川先生
からのメッセージ
体温は、体調管理の上で最も用いられる指標の一つです。非接触型の体温計、耳の鼓膜温を測定する体温計、そして、昔ながらの腋窩で測定する体温計など、体温計は種類が豊富で、その目的に合ったものを選べば、誰にでも簡単に子どもの体温測定ができます。そして、その数値の変化を見るだけで、子どもの体調の変化を客観的に知ることができます。
ただし、ちょっとしたことで変化しやすい子どもの体温は、その基本を知っていなければ、不正確な体温測定になってしまい、余計な心配ばかりが増えることにもなりかねません。体温についての正しい知識を持ち、正確に体温を測定する方法を身につけ、是非、お子さんの健康管理に役立ててください。
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