公開日2021.08.30
※当コンテンツの内容は2021年7月時点の情報となります。
健康を保つ体温リズムを作るには秘訣があります。朝・昼・夜のポイントをご紹介します。 目次
監修:永島 計 早稲田大学人間科学学術院 体温・体液研究室 教授(医師、博士(医学))
睡眠は健康な暮らしを支える大きな柱の一つです。しかし、高齢になると夜間の体温が下がりにくく、睡眠も浅くなりやすいことがわかっています。若いころより睡眠の質が低下することは否めませんが、朝、日中、夜の生活習慣を見直し、暮らし方を工夫することで、深く眠れ、健やかに暮らすことができます。
体温の1日の変動とも深くかかわっている体内時計は、24時間より長めにできているため、そのままでは実際の時間より少しずつ遅れてしまいます。それを正常な時間にリセットするのが朝の光です。
体内時計は加齢とともに変化していき、高齢者では朝の体温の立ち上がりが若者より早くなります。年をとると早起きになるのは自然なことなのです。毎朝決まった時間に起きて朝の光にあたることは健康な生活リズムをつくる第一歩であり、夜の眠りをスムーズに導く後押しもします。
脳は眠っている間も活動し、起きている時と変わらないくらいエネルギーを消費しています。しかし、睡眠中はなにも食べないので、朝起きたときの脳はガス欠状態です。
起床後はすみやかに朝食をとり、脳にエネルギーを補給して脳がスムーズに働くようにしましょう。
近年、規則正しく食事をとると体内時計が調節され、生活リズムを整えることが明らかになりました。なかでも朝食は、体内時計のリセットに最も重要であることがわかっています。
体温は、午前中は上がり続け、午後に最も高くなります。ヒトは昼間に行動して夜に休むので、その行動様式に都合のよいリズムになっているのです。この自然のリズムを乱さないよう、日中はしっかり体を動かし、夜はゆっくり休んで、昼夜のメリハリをつけることが大切です。昼間に十分体を動かすと、夜は寝つきがよく、眠りは深くなります。
長時間の昼寝は夜の眠りを浅くしますが、短時間の昼寝は日中の行動によい効果をもたらし、ひいては夜の睡眠にもよい影響を与えます。高齢者の場合、30分程度の昼寝をすると午後の眠気が起こりにくく、元気に行動する力になります。
夕方の運動は、寝つきをよくし、深い睡眠をもたらします。
夜は暗いのが当たり前ですから、昼白色蛍光灯の強い光を浴びると体内時計が遅れてしまいます。明るすぎない、電球色の照明のほうがよいでしょう。
床につく直前の入浴は寝つきを悪くすることがあります。2~3時間前がおすすめです。
入浴時間は、38℃のぬるめの湯なら25~30分、42度の熱めの湯なら5分程度が、寝つきをよくします。また、40℃前後の湯に腹部までつかり、汗をかく程度に30分ほど入浴する半身浴も効果があるとされています。自分の好みに合った入浴法を選ぶとよいでしょう。
夕食を遅い時間にとると就寝までの時間が短くなり、眠っている間も消化活動が行われるため、睡眠が妨げられます。
感受性の個人差はありますが緑茶やコーヒーに含まれるカフェインは覚醒作用、タバコには刺激作用があるため寝つきが悪くなり、深い睡眠も得にくくなります。過度なアルコール摂取は明け方の睡眠を浅くします。
永島 計
早稲田大学人間科学学術院 体温・体液研究室 教授(医師、博士(医学))
1985年京都府立医科大学卒業。京都府立医科大学附属病院研修医、修練医、大阪鉄道病院レジデントを経て、京都府立医科大学大学院博士課程(生理系)修了。京都府立医科大学助手、YALE大学医学部・John B Pierce研究所ポストドクトラルアソシエート、王立ノースショア病院オーバーシーフェロー、大阪大学医学部助手•講師、早稲田大学助教授を経て、2004年から現職。日本スポーツ協会スポーツドクター、日本医師会認定産業医。