公開日2021.08.30
※当コンテンツの内容は2021年7月時点の情報となります。
熱を測った時に体温計が37℃を示していると、「熱が出た!」と思いがちです。ところが、多くの場合、37℃は平熱の範囲内だと考えられます。
監修:永島 計 早稲田大学人間科学学術院 体温・体液研究室 教授(医師、博士(医学))
子どもの体温を測ってみたら、37℃。「どうしよう、保育園が預かってくれない」「予防接種が受けられない」「プールに入れない…」。そう思う保護者が多いかもしれません。これは昔使われていた水銀体温計の37℃を示す数字が赤い文字で書かれていたことから生まれた“誤った常識”です。
平熱とは、健康な状態で安静時に、決まった部位を決まった方法で測定した温度をいいます。一般的には腋窩(えきか:ワキの下)で測った温度を指すことが多く、その範囲は多くの場合、36~37℃におさまることが多いようです。ただし、37℃を超えたり、36℃を下回ったりしていても、必ずしも異常とはいえません。
日本人の平均体温を調べたものとして、1957年に報告された、東京大学・田坂定孝先生の研究が有名です。東京都内の10~50歳代の健康とみなされる男女3,000人余りを対象に、四季を通じて午前と午後のデータを集めたものです。
測定方法は、椅子に腰かけた状態での水銀体温計による30分間の腋窩検温です。すると、全体の73.6%の人の体温は36.9±0.3℃の範囲にありました。
図1は大学生140人ほどを対象に腋窩温度を10分間測定した、私の研究室のデータです。若年の男女に限られますが、データでは36.0~37.2°Cの間に大部分が含まれることがわかります。子どもではやや高めに、高齢者はやや低めに分布することが過去のデータからは示唆されます。37℃は発熱の目安というより、むしろ平均的な平熱の範囲内なのです。
平熱は人によって違い、そこには約1℃の幅があるので、何度以上なら発熱といちがいに決めることはできません。健康な時に決まった方法で測った自分の平熱の値を覚えておけば、熱っぽい時、普段より体温がどれくらい上がっているかを正確に知ることができます。日ごろから体温を測定して、自分の平熱を知っておきましょう。
永島 計
早稲田大学人間科学学術院 体温・体液研究室 教授(医師、博士(医学))
1985年京都府立医科大学卒業。京都府立医科大学附属病院研修医、修練医、大阪鉄道病院レジデントを経て、京都府立医科大学大学院博士課程(生理系)修了。京都府立医科大学助手、YALE大学医学部・John B Pierce研究所ポストドクトラルアソシエート、王立ノースショア病院オーバーシーフェロー、大阪大学医学部助手•講師、早稲田大学助教授を経て、2004年から現職。日本スポーツ協会スポーツドクター、日本医師会認定産業医。