体温はどこで測っても同じですか?

公開日2021.08.30

※当コンテンツの内容は2021年7月時点の情報となります。

体の温度は、体表に近いところと体の内部では違います。また、部位によっても異なります。平熱は、健康な時に同じ部位で何度か測定して把握しましょう。
監修:永島 計 早稲田大学人間科学学術院 体温・体液研究室 教授(医師、博士(医学))

体温は測る場所によって異なります

体の内部は高く、表面は低くなります

ヒトの体温は体の表面か内部かによって違います。また、表面であれ内部であれ、どの場所かによっても異なります。
体の内部の温度を中心(コア)温、体表近くの温度を被殻(シェル)温といいます。(図1)
コア温は、脳や心臓などの大切な臓器の働きを保つために高く安定しています。通常の環境(25℃前後の気温で薄めの衣類を身に着けた、暑くも寒くもない状態)におけるコア温は37℃前後で、若い成人の男性ではほとんどの人が±0.3℃の範囲に入ります。
一方、シェル温は、体表から熱を放散されるためコア温より低くなります。とくに外界と接している皮膚の温度は低く、32~33℃前後です。また、個人差が大きく、同じ人でも部位によって大きな違いがみられます。

図1 コア温とシェル温

内部の温度が反映される場所で測定します

安定した指標としての体温はコア温を測定すれば得られますが、体の内部なので日常的には測れません。
そこで体に負担をかけずに簡単に検温できる場所として、ワキ(腋窩)、口(舌下)、耳(鼓膜)、直腸など、コア温の変動を反映し、しかも体と表面に近くて測定しやすい場所が用いられています。検温に必要な時間や方法は測定する部位ごとに違います。

平熱は同じ部位で何度か測って把握しましょう

ヒトの体の温度は部位によって違います。日本ではワキでの検温が主流で、耳や額も使われますが、別の場所で測る習慣の国もあります。

図2 健康な大学生を対象に測定した鼓膜温と腋窩温の関係

上の図は私の研究室で調べたデータです(図2)。外耳道に挿入するタイプの温度計を用いて鼓膜温を、同時に腋窩温も測定を行いました。2つの温度はよく相関しています。このことは、全体で見ると、鼓膜温の高い人は腋窩温も高かったことがわかります。
しかし、例えば37˚Cの鼓膜温度を示した人たちに注目すると、腋窩温は1˚C以上の幅があることがわかります。この原因として、測定誤差の影響以外に、体表から測定する腋窩温が筋肉や脂肪の量などの個人差による影響を反映している可能性があります。
一方、同じ時間で同じ室温で測定した個人の腋窩温の違いは少ないことがわかっています。
このことから、平熱には個人差があり、他人との比較はあまり意味がないことがわかります。自分の平熱を、健康な時に何度か測って知っておきましょう。

監修者紹介

永島 計

早稲田大学人間科学学術院 体温・体液研究室 教授(医師、博士(医学))

1985年京都府立医科大学卒業。京都府立医科大学附属病院研修医、修練医、大阪鉄道病院レジデントを経て、京都府立医科大学大学院博士課程(生理系)修了。京都府立医科大学助手、YALE大学医学部・John B Pierce研究所ポストドクトラルアソシエート、王立ノースショア病院オーバーシーフェロー、大阪大学医学部助手•講師、早稲田大学助教授を経て、2004年から現職。日本スポーツ協会スポーツドクター、日本医師会認定産業医。

永島先生
からのメッセージ
人に限らず体温は生きていく上で非常に重要な要因です。感染症の蔓延(まんえん)によって、発熱や体温計について日常的に人々の話題にのぼるようになりました。しかし、体温は、発熱時だけの問題でなく、われわれのふだんの健康に密接にかかわっています。われわれが、生をうけて、死ぬまで高い温度に維持される体温のしくみを説明していきます。次に、平熱と呼ばれるふだんの体温を知るための測定の方法について解説をします。最後に、感染症の有無の最初の判断材料となる発熱について説明し、対処方法や体にとってどのような意味があるかを知っていただきたいと思います。
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