暑さ、寒さに対する反応が弱くなる
発汗などの体温を調節する機能が低下する
高齢者では暑さ、寒さに対する感覚が鈍くなり、身体の反応も弱くなっています。具体的には、暑くても汗をかきにくく、汗の量も少なくなります。また暑いと皮膚の血流が増えて体内の熱を逃がそうとするはずですが、高齢者の場合、暑くても皮膚の血流量が増えにくくなります。
逆に寒くなっても皮膚の血流量があまり減らないため、体内の熱を逃がしてしまい、体を冷やしやすくなります。
熱中症にかかりやすくなる
高齢者は日常生活中でも熱中症にかかりやすい
熱中症の年代別の発生状況をみると、若年層では屋外での運動や仕事により起こることが多くなっています。これに対し、高齢者では、屋外の場合でも散歩や買い物などの日常活動中、あるいは屋内で起こる割合が多くなっていました。
熱中症にかからないために
こまめな水分補給を
高齢者には、あまり水を飲みたがらない人がいます。まわりの人も気をつけて、いつでも水分を補給できるようにしてあげましょう。 汗をかくほど暑いときは、スポーツドリンクを水で薄めたもので塩分も補給したほうがいいでしょう。
クーラーを活用する
高齢者にはエアコンを嫌う人も多いのですが、風が直接あたらないようにして室温を28℃以下に保ちましょう。
まわりの人も高齢者には気を配って
高齢者では発汗が少なく、暑いという感覚が鈍くなっているため、「暑い」と感じたときは注意が必要です。
高齢者自身はもちろん、まわりの人も、室内の温度や、水分をとらせるなど、気を配ってあげることが必要になります。
出かけるときは日差しをさえぎりましょう
高齢者の場合、夏の炎天下の外出は避けるべきです。日差しがそれほど強くないときでも、日傘や帽子などで熱中症対策をしてください。
寒いと体が冷えやすい
老人性低体温症
寒いとき、高齢者の手に触ると、温かく感じることが多いと思います。本来、寒いときは皮膚の血管が縮まって血流量が少なくなり、体内から熱が逃げるのを防ぐ仕組みがあります。しかし若い人にくらべて高齢者の皮膚血管はその反応が鈍いため、体内から熱が奪われやすくなります。
さらに体内で熱を作り出す反応も高齢者では弱いため、体が冷えてしまいます。
寒いときに体の中心部の体温が35℃以下に下がった状態を「偶発性低体温症」といいますが、高齢者の体温が低くなったときの状況をとくに「老人性低体温症」と呼びます。
監修者紹介
入來 正躬(山梨大学名誉教授)
1960年東京大学医学部大学院修了。フンボルト奨学生としてドイツ・マックスブランク心臓研究所に留学。山梨医科大学生理学教授、山梨県環境科学研究所長を経て、ひかりの里クリニック理事長・院長。
入來先生からのメッセージ
人は高齢になると、若かったころと比べて、いろいろな機能が衰えてきます。しかもその機能の衰えは一様ではなく、たとえば神経伝達速度の衰えは90歳でも10%程度しか低下しないのに対し、腎臓の機能は半分にまで低下します。
高齢者は、単なる「衰えた成人」ではなく、機能条件の変化にたくみに対応し、それなりに「健康に」生きている存在といえます。
体温調節においても、高齢者には普通の成人とはかなり異なった面があります。高齢者が健康な形で日常を過ごすために、その体温に関する知識を有効に活用していただければ幸いです。
