65歳をすぎたら、平熱を測りなおしてみましょう。
高齢者の体温は若い人より約0.2℃低い
65歳以上の人は、50歳以下の人より0.2℃以上体温が低くなっています。若いころの経験をもとに、「私の平熱は36.7℃」などといっても、いまはもっと低くなっている可能性が高いのです。体温が高かった若いころの平熱を覚えていたのでは、発熱したとき、気づかなかったり、熱の程度を軽いと思ってしまう可能性があります。
平熱は、一つではない
体温は1日のうちで夜中や朝は低く、午後は高くというように変動しますから、時間帯ごとの平熱をおぼえておくことも大切です。
時間帯ごとの平熱について
1日4回体温を測り、時間帯ごとの平熱としておぼえておきましょう。
- 起床時
- 午前
- 午後
- 夜
- 食後すぐは体温が上がりますから、食前や食間に検温するのが適切です。
- 平熱の測定は1日だけでなく、日を置いて何回か測ってみましょう。
季節ごとの平熱を測っておきましょう。
季節ごとに確認したい平熱
高齢者は、暑さ、寒さに対する反応が弱くなり、少しくらいの寒さや暑さには反応しないこともあります。このため寒いときは体温が低く、熱いときは高いところで安定してしまう傾向があります。
このため高齢者の場合、平熱は季節ごとに確認しておいたほうがいいでしょう。
寒さへの反応
- 筋肉を震わせて熱を生み出す反応
→遅い、不十分、不正確 - 皮膚血管を収縮させて体温を逃がさなくする反応
→遅い、不十分、不正確 - 身体深部の温度
→下降しやすい
暑さへの反応
- 汗をかいて熱を放散させる反応
→遅い、不十分、不正確 - 皮膚血管を拡張させて体温を逃がす反応
→遅い、不十分 - 身体深部の温度
→上昇しやすい
監修者紹介
入來 正躬(山梨大学名誉教授)
1960年東京大学医学部大学院修了。フンボルト奨学生としてドイツ・マックスブランク心臓研究所に留学。山梨医科大学生理学教授、山梨県環境科学研究所長を経て、ひかりの里クリニック理事長・院長。
入來先生からのメッセージ
人は高齢になると、若かったころと比べて、いろいろな機能が衰えてきます。しかもその機能の衰えは一様ではなく、たとえば神経伝達速度の衰えは90歳でも10%程度しか低下しないのに対し、腎臓の機能は半分にまで低下します。
高齢者は、単なる「衰えた成人」ではなく、機能条件の変化にたくみに対応し、それなりに「健康に」生きている存在といえます。
体温調節においても、高齢者には普通の成人とはかなり異なった面があります。高齢者が健康な形で日常を過ごすために、その体温に関する知識を有効に活用していただければ幸いです。
