心因性発熱かもしれないと思ったら

公開日2021.08.30

※当コンテンツの内容は2021年7月時点の情報となります。

心因性発熱かもしれないと疑って受診する時の注意点について説明します。最初は内科あるいは小児科で診てもらい、そこから心療内科を紹介してもらうとよいでしょう。受診の際は1週間分の体温の記録があると、診断の助けになります。
監修:岡孝和(国際医療福祉大学 医学部心療内科学主任教授)

自己判断は禁物。まずは内科(小児科)を受診しましょう

心療内科を紹介してもらいましょう

ストレス性の高体温に対し、自己判断は禁物です。自分で勝手に「ストレス性だ」と思っても、じつは体のどこかに悪い場所(器質的疾患)が隠れているかもしれません。まず、内科(子どもの場合は小児科)でしっかり熱の原因を調べることが不可欠です。器質的疾患がみつからず心因性発熱が疑われる場合は、検査を受けた病院から心療内科に紹介してもらうという流れになります。心因性発熱は心理社会的ストレスにより引き起こされる体温上昇という身体反応、つまり心身症です。心身症の治療を専門とする心療内科で治療を受けることが大切です。ただし、心の病気(精神疾患)を伴う場合は、精神科での治療を優先した方がよいこともあります。

不明熱の18%が心因性発熱という報告も

わが国での報告では小児の不明熱(38.3℃以上の高熱)患者の18%が心因性発熱でした1)。成人では2週間より長く続く37℃以上の発熱を訴えて受診した患者で、特別の所見を認めなかった83症例のうち40例(48%)は心因性発熱であった2)という報告があります。心理的ストレスがかかわる高体温はけっして珍しくないのです3)4)

1)柱新太郎, 吉野加津哉:小児内科. 1987; 19(1): 77-82
2)Tsukasa Nozu, Akira Uehara: Internal Medicine. 2005; 44: 901-902
3)岡田あゆみ, 藤井智香子:心身医 2017, 57(12):1252-1260.
4)櫻庭美耶子, 佐藤研, 櫻庭裕丈, 平賀寛人, 佐竹立, 福田眞作:日本心療内科学会誌 2018, 22:28-35.

体温表をつけて受診するとよい

体温表から見えてくる病気の性質

受診する際には、少なくともそれ以前の1週間分でも、体温の記録があると、診断の助けになります。その後の診療では、微熱日記をつけてもらうことが治療の一環となります。それによって、医師は(1)解熱剤の効果、(2)仕事(学業、家事)、休息と体温の関係、(3)急な情動ストレス(怒りいっぱいのけんかなど)と体温の関係、(4)体温と疲労の関係(この患者さんにとって何度以上がつらいのか、図1の場合37.5℃を超すと急に倦怠感が増すことが理解できます)(5)薬物療法の有効性、など、多くのことが一目で理解できます。
また患者さん自身も、体温と生活上のイベントを記録して観察することで、今まで気づかなかった「自分の体温は、こういう時に上がるのか(こうすれば下がるのか)」といったストレスと体の症状の関連性(心身相関))に気づくことができます。そうした「気づき」が治療や予防の理解へつながり、病気の回復にも役立ちます。


(図1)微熱記録表の見方と意義

図1 体温表から見えてくる病気の性質

午前8時、12時、午後4時、8時に体温(腋窩温)を測定した場合

(a)日中に仕事をし(学校にゆき)、午後11時頃就寝し、午前7時頃に起きる健康な人では、腋窩温は午後4時頃最も高く、午後8時に向かって低下し
 午前8時が最も低くなります。そしてどのような体温であっても倦怠感はありません。
(b)午前12時頃、体温が最も高くなるようであれば、アセトアミノフェンなどの解熱薬を午前9時頃服用してみます。
 ストレス性に出ている微熱の場合、解熱薬を服用しても腋窩温は下がりません(下がっても0.2℃程度で、平熱化することはまずありません)。
 ただし心因性発熱が頭痛を伴っている場合、熱は下がらなくても頭痛は良くなるという人が多いです。
(c)この図は多くのことを教えてくれています。
 1.午後8時に向かって体温が上昇しているので、入眠困難が予想されます。ヒトは夜、体温が下がり始めてから眠くなるからです。
 2.体温の概日リズムの位相が4時間ほどずれていることがわかります。8時よりも12時の体温の方が低いので
  (本人の脳の中は深夜から明け方の状態 になっていると考えられます)、午前中の活動はしんどいだろうなと予想できます。
 3.37℃を越すと倦怠感が強くなっていることから、37℃程度の微熱であっても、この体温は本人にとってはつらい症状なのだろうな
   と想像できます。
(d)正常な体温の概日リズムが失われているとこがわかります。体温調節に関わる自律神経、ホルモンの日内リズムが失調している可能性があります。
  また午前8時の腋窩温が高いことから、熟眠障害の可能性(睡眠中に生じる生理的体温低下がみられないため)も考えられます。
(e)午後4時までは平熱であったのに、午後6時頃、38℃を越す高熱となり、午後8時に低下傾向になっています。
 その場合、午後4−6時にあったイベントや行動がストレス性体温上昇を引き起こしている可能性があります。
 極度の緊張やイライラを伴うこと(そのような人に会うなど)、注意の集中を要する作業(細かい作業、締め切り間際の作業、読書やゲームも)
 外出(運動)、買い物や人との会話など楽しいことも含まれます。

このような記録によって、今の自分にとって何をどれほどすることが無理なのかを知ることができます。

公開日 2021年8月30日 ※2007年の記事より加筆・掲載

監修者紹介

岡孝和

国際医療福祉大学医学部心療内科学主任教授

1996年九州大学大学院助手、1998-2002年ハーバード医科大学、2002年産業医科大学医学部講師、九州大学大学院医学研究院心身医学准教授を経て、2017年より現職、2018年4月より同大学大学院医学研究科臨床医学研究分野心療内科学教授、2020年より国際医療福祉大学成田病院心療内科部長を兼任。

岡先生
からのメッセージ
慢性的に過労状態が続くと微熱を生じる人がいます。また心理的なストレスによっても高い熱が出ることもあります。このような人は病院に行って検査を受けても異常がないといわれたり、解熱薬を飲んでも効かなかったりします。ストレスが原因で生じるこのような発熱についてお話します。
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