公開日2021.08.30
※当コンテンツの内容は2021年7月時点の情報となります。
新型コロナウイルス感染症は、かぜやインフルエンザによく似た症状で始まります。発症した人のなかで、約80%の人は軽症で回復しますが、約20%の人は症状が重くなることがわかっています。
監修:岡部信彦(川崎市健康安全研究所 参与)
感染症の多くは、ウイルスが体に入って量が増え、症状が現れるまでに一定の日数がかかります。これを潜伏期間といいます。新型コロナウイルスの潜伏期間は1~14日とされていますが、多くは感染後5日程度で症状が出ます1)。
はじめは、かぜやインフルエンザによく似た症状がみられます。
よくみられるのは、熱、せき、だるさ、息切れ(呼吸困難)で、ほかに痰(たん)、筋肉痛、食欲低下、下痢、嗅覚や味覚の異常(においや味の感じ方に変化が現れる)などがみられることもあり、人によって少し異なります。
1)新型コロナウイルス感染症(COVID-19) 診療の手引き・第4.2版
P6 2 伝播様式 【潜伏期・感染可能期間】
https://www.mhlw.go.jp/content/000742297.pdf
新型コロナウイルス感染症は、症状が出てから1週間あたりで、軽症で終わるか、逆に症状が強くなっていくかの分かれ目を迎えます2)。
軽症で終わる人は、症状が出て1週間を目安にその後回復しますが、中等症、あるいは重症となる人は、そこから強い息切れ、胸の苦しさや痛みなど肺炎の症状が悪化して、入院が必要になります。なかには急速に症状が悪化する人もいるので、症状の変化には気をつけましょう。
重症化する人のなかには、肺炎の症状の悪化だけでなく、血栓症や脳梗塞など、深刻な血管関連の症状が現れることもあります。
発症した人のなかで、軽症で終わる人が約80%、入院が必要となる人が約20%、人工呼吸器などが必要になる人が約5%、命にかかわる人が約2~3%とされています。
2)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第4.2版
P9 1 臨床像 図2-1 新型コロナウイルス感染症の経過
https://www.mhlw.go.jp/content/000742297.pdf
新型コロナウイルス感染症で大きな特徴とされるのが、感染しても全く症状が出ない人がいることです。そして、やっかいなことに、症状が出なくても、ほかの人にうつす可能性があるのです。
自分は症状がないので、感染に気づいていませんが、知らないうちに感染を広めていることがあると考えると、人混みではマスクをつける、こまめに手洗いをする、といった感染対策の基本は、すべての人にとって大切であることがよくわかります。
新型コロナウイルス感染症の症状は、かぜやインフルエンザに似たところもありますが、少し違うところもあります。それぞれの病気の特徴と症状について、表にまとめました。
かぜ | インフルエンザ | 新型コロナウイルス感染症 | |
---|---|---|---|
潜伏期間(感染してから症状が出るまでの期間) | 2~4日間 | 2~5日間 | 1~14日間 |
感染経路 | 飛沫・接触 | 飛沫・接触 | 飛沫・接触・マイクロエアロゾル |
症状のでる場所 | のど、鼻 | のど、鼻、全身 | 全身、呼吸器。味覚や嗅覚など |
熱のでかた | 38度前後の微熱 | 高熱 | 微熱~高熱 |
進行のしかた | ゆるやか | 急激 | 約1週間後に急変することも |
治療法 | 対症療法 | 抗インフルエンザ薬 | 対症療法 |
ワクチン | なし | ある | ある |
(テルモ作成)
かぜ | インフルエンザ | 新型コロナウイルス感染症 | |
---|---|---|---|
発熱 | 〇 | ◎ | ◎ |
せき | 〇 | ◎ | ◎ |
息切れ | × | × | 〇 |
のどの痛み | ◎ | 〇 | 〇 |
鼻水 | ◎ | 〇 | △ |
筋肉痛・関節痛 | 〇 | ◎ | ◎ |
頭痛 | △ | ◎ | 〇 |
下痢 | △ | 〇 | △ |
全身のだるさ | 〇 | ◎ | 〇 |
味覚の異常 | × | 〇 | 〇 |
嗅覚の異常 | × | 〇 | 〇 |
◎よくみられる 〇時々みられる △場合によってみられる ×あまりみられない
(テルモ作成)
岡部信彦
川崎市健康安全研究所 参与
1971年、東京慈恵会医科大学卒業。同大学小児科で研修後、帝京大学小児科助手、その後、慈恵医大小児科助手。国立小児病院感染科、神奈川県立衛生看護専門学校付属病院小児科などに勤務。1991~1994年、世界保健機関(WHO)西太平洋地域事務局(フィリピン・マニラ市)伝染性疾患予防対策課課長。1994~1997年、慈恵医大小児科助教授。1997年、国立感染症研究所感染症情報センター・室長。2000年、同研究所感染症情報センター長。2012年から川崎市健康安全研究所 所長に就任し、2024年より現職。内閣官房新型コロナウイルス感染症対策分科会委員、厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード委員を歴任。