公開日2021.08.30
※当コンテンツの内容は2021年7月時点の情報となります。
新型コロナウイルス感染症で、重症化する人には共通のリスク因子がみられます。また、回復後も後遺症に悩む人も少なくありません。
監修:岡部信彦(川崎市健康安全研究所 参与)
目次
新型コロナウイルス感染症にかかると、約20%の人が重症化するといわれています。その人たちの傾向を調べた結果、年齢が高いほど重症化する確率も、亡くなる確率も高くなることがわかっています。ただし最近は、重症化(酸素・人工呼吸器を要する)が、40~50代の年齢層に下がってきています。20~30代の重症者もいるので「若いから大丈夫」と過信はできません。
年齢のほかに、持病があることも重症化や死亡につながるリスクと考えられています。
慢性腎臓病、肝疾患、脂質異常症、高血圧、糖尿病の持病がある人、肥満の人は、重症化する割合が高くなります。持病は、二つ、三つと重なれば重なるほど重症化する可能性が高くなると考えられています。
一方、心疾患、慢性肺疾患、脳血管障害、慢性腎臓病のある人は、死亡する割合が高い傾向にあります。重症化しやすい人の持病と、死亡につながりやすい人の持病は、異なる可能性があります。
他方、今のところ小児年齢は大人に比べて感染しにくく、感染しても重症になりにくく、国内での小児死亡例は、2021年5月現在、0例です1)。
1)公益社団法人 日本小児科学会 小児における新型コロナウイルス(COVID-19)の現状と感染対策についての見解 2021年5月20日
新型コロナウイルス感染症が回復したあと、数週間~数カ月にわたって、さまざまな後遺症に悩まされる人が少なくないことが明らかになっています。
症状はとても多様です。倦怠感、息苦しさ、胸の痛みや違和感、せきなどが多くみられる症状ですが、そのほか、嗅覚障害、関節痛、頭痛、目や口の乾燥、鼻炎、味覚障害、食欲低下、めまい、筋肉痛、不眠症、脱毛、発汗、下痢、精神や認知の働きの障害などの症状が続く人もいます。
後遺症がみられやすい人の特徴として、重症だった人、高齢者、女性、肥満などが挙げられていますが、軽症で回復した人であっても、症状が続いたり、しばらくして何らかの症状が出てきたりする人もいます。
・65歳以上の高齢者 |
・悪性腫瘍(がん) |
・慢性閉塞性肺疾患(COPD) |
・慢性腎臓病 |
・2型糖尿病 |
・高血圧 |
・脂質異常症 |
・肥満(BMI30以上) |
・喫煙 |
・固形臓器移植後の免疫不全 |
生物学的製剤の使用、HIV 感染症、妊婦については、重症化リスクが高いかどうか評価中です。
「新型ウイルス感染症COVID-19診療の手引き第4.2版」より作成
https://www.mhlw.go.jp/content/000742297.pdf
岡部信彦
川崎市健康安全研究所 参与
1971年、東京慈恵会医科大学卒業。同大学小児科で研修後、帝京大学小児科助手、その後、慈恵医大小児科助手。国立小児病院感染科、神奈川県立衛生看護専門学校付属病院小児科などに勤務。1991~1994年、世界保健機関(WHO)西太平洋地域事務局(フィリピン・マニラ市)伝染性疾患予防対策課課長。1994~1997年、慈恵医大小児科助教授。1997年、国立感染症研究所感染症情報センター・室長。2000年、同研究所感染症情報センター長。2012年から川崎市健康安全研究所 所長に就任し、2024年より現職。内閣官房新型コロナウイルス感染症対策分科会委員、厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード委員を歴任。